平家の怨念?!ヘイケガニ!

~うどん県の水生生物シリーズ~

 と,いうわけで,市場には出てこない,うどん県の海に生息する生きものたちについてすこしずつ紹介していきたいと思います。

 第一回目はヘイケガニ Heikea japonica(Von Siebold, 1824)(図1)です。
 ヘイケガニの命名者は,かの有名なシーボルトです。シーボルトはイセエビなどの命名者でもあります。日本産甲殻類の研究の原点はシーボルトにあると言われています1)

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(図1)燧灘で採集されたヘイケガニ

 ヘイケガニは,左右につり上がった目,だんごの鼻の直下にかたく結んだ大きな口の面相から,壇の浦に沈んだ平家武者の亡霊だとして広く知られています。長門・豊前の戦に敗れて豊前国柳浦に入身した平清経の化身,キヨツネガニとも呼ばれています2)
歌川国芳の錦絵「大物之浦海底之図」でも,平家蟹が描かれています。
 江戸時代の書物である『毛吹草』(1645刊)には,讃岐の名物として「魚島鯛鰆」などとともに「八嶋平家蟹(ヤシマノヘイケカニ)」があげられ3),また,『日本山海名物図会』(1797刊)にも「讃岐平家蟹(さぬきへいけかに)」が図とともに掲載され,古くから有名であったことがわかります4)(図2)。
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(図2)日本山海名物図会(讃岐平家蟹)国立国会図書館デジタルコレクション.特1-106 より

 また、ヘイケガニ科のキメンガニ Dorippe sinica (Chen, 1980)(図3)も香川海面に生息しています。

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(図3)燧灘で採集されたキメンガニ

 ヘイケガニよりも甲の面相がゴツゴツしていて,更にいかつい顔に見えます。正に鬼面です。
 
 ちなみにこのヘイケガニとキメンガニ,市場に出ないだけあって普通は食用とはなりません。私も食べたことはありませんが,いつか試しに食べてみたいと思っています。食べる機会があればまた報告したいと思います。

文責 メガネウオ

文献
1)山口隆男(2011) 日本における科学としての甲殻類研究の始まり.Carcinological Society of Japan Cancer 20:99-104(2011)
2)三宅貞祥(1983) 原色日本大型甲殻類図鑑(Ⅱ).株式会社 保育社
3)松江重頼(1645)毛吹草.(早稲田大学図書館.古典籍総合データーベース.文庫18 00042.より)
4)平瀬徹斎(1797)日本山海名物図会.編.(国立国会図書館デジタルコレクション.特1-106 より)

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